木取り
NARADOLL HIGASHIDAでは主に社寺にも使われるグレードの高い米ヒバを使用しています。
丸太で仕入れそれを五寸板に引いて3年間ほど乾燥のため倉庫で寝かせます。乾燥させた五寸板を各人形サイズの型紙に合わせ木地取りします。木の目を読み最適な部分だけを贅沢に使用する為、なるべく無駄を省く経験と技術が必要な工程です。
墨打ち
各サイズに取り出した木地1つ1つに芯(中心)を決める線を付けます。どんなに小さな人形でもこの芯が狂うと仕上がりの佇まいに影響が出る為ミリ単位で細心の注意を払いながら全て手作業で行います。手作業で行う事で細かな木の状態・表情を判断し、人形の正面はどの向きか、上下はどうか、等を確認していきます。膨大な時間と手間がかかりますが作り手にとって心構えが決まる大切な時間です。
彫り
墨打ちが終わった木地をノミで彫り上げていきます。
奈良一刀彫は一刀で彫り上げるわけではありません。多種多様なノミを使い分けます。
「一刀一刀魂を込めて彫る」という意味からその名が付いたとも言われています。
彫りは粗彫り→中彫り→仕上げといった順序で進めます。その間に切れ味が鈍くなったノミは何度も研ぎを入れます。ノミ跡を残す技法の奈良一刀彫はその切れ味を魅せる事、それ自体を表現に用います。その表現によりデフォルメされたフォルムが独特の愛嬌を生み、角張っているのに柔らかい表情の奈良人形になります。これは約900年の伝統に裏打ちされた技術です。
胡粉
彫り上がった人形にまずお湯で薄めた膠(ニカワ)液を塗り込みます。
膠は古来、天然の接着剤として用いられ、人形へ彩色をする前の木地に薄くコーティングする事で、滲み防止の役割があります。
その後に胡粉(ゴフン)を作り下地を塗り上げます。胡粉は牡蠣の貝殻を細かく砕いた真白な絵具です。雛人形のお顔はこの胡粉の上澄みを丁寧に何重にも塗り重ねて仕上げる事で白く優しい表情に仕上がります。
彩色
胡粉で仕上げた下地に日本画絵具(水干・岩絵具)で色付けします。
面相筆を使い全て手作業で行います。日本画絵具の独特の質感は柔らかく観る人を楽しませてくれます。あとは金箔や墨を使いより華やかで上品な奈良人形へと仕上げていきます。
完成
一刀彫の大胆な彫り、繊細な彩色、
その相反する魅力が同居した伝統工芸「奈良一刀彫」の奥深い世界をお楽しみください。